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土地価格への影響は?「生産緑地の2022年問題」のいま
生産緑地の指定が解除されることで多くの土地が宅地化され、地価が暴落する──近年、注目を集めていた「生産緑地の2022年問題」。2022年となった今年、本当に“問題”は起こり得るのでしょうか。最新情報について調査してみました。
70年代の急速な都市化を背景につくられた「生産緑地制度」
優先的かつ計画的に市街化を図るべきエリアとされている「市街化区域」。その中にある農地や林地を30年間という期限付きで保全されている農地や林地のことを生産緑地といいます。2022年2月現在、全国に約1万2000ヘクタール、うち東京都内には約3000ヘクタールの生産緑地が存在します。
生産緑地に指定されるための絶対条件は、営農です。しかしその一方で固定資産税が農地並みの低水準に抑えられる、相続税の納税猶予を受けられるなど税務上のメリットがあります。
生産緑地という区分が生まれた生産緑地法は1972年に制定。背景には、人口増加と一部地域の急速な都市化がありました。緑地から宅地への転用が増加したことで、住環境が急激に悪化。土地そのものの地盤保持や保水機能が低下し、災害も多発しました。生産緑地制度は、こうした社会問題の歯止めをかけるために設けられたのです。
「生産緑地の2022年問題」と「特定生産緑地制度」
2022年は、生産緑地の指定開始から30年の年。地主が希望すれば、生産緑地の指定を解除して宅地として売却できます。このことがなぜ世間の注目を集めてきたかというと、宅地の供給量が急増し、地価が暴落する恐れがあったからです。これが「生産緑地の2022年問題」です。
一方で、時代が移り変わり、数々の懸念が生じてきました。
・30年が経過した生産緑地は、まず市区町村に買い取り申出ができることになっている。しかし、現在は市区町村に財政的余裕がなく、買い取りが困難。
・農業関係者にあたっても買い取り手がなく、生産緑地が解除される場合、税制の優遇がなくなる。地主は「固定資産税が払えない」「後継者がいない」といった理由により、宅地として売却する可能性が高くなり、土地の供給量が増える恐れがある。
・かつては宅地化が望まれていた年の農地が、時代の流れと共に「保全・活用されるもの」へと認識が変化。現在、生産緑地には、景観の保全、災害時の防災空間、地域住民の農業体験や交流など、さまざまな役割が期待されている。
このような背景から、2017年6月には改正都市緑地法が施行。生産緑地指定から30年が経過した後も営農を条件に10年ごとの延長が認められる「特定生産緑地制度」が創設されました。この制度により、全国の対象面積の8割以上が特定生産緑地に移行する見通しとなっています。
地価動向の現状と今後の見通し
「令和3年地価公示(1月1日時点)」によると、2020年1月以降の1年間の地価の変動は、全国平均で住宅地が0.4%で5年ぶりの下落、商業地が0.8%で7年ぶりの下落に。東京、大阪、名古屋の三大都市圏では全用途平均、住宅地、商業地いずれも8年ぶりの下落となりました。
「生産緑地の2022年問題」は今後どうなるのでしょうか。
前述のとおり、2017年の特定生産緑地制度が創設され、2018年には都市農地の貸借の円滑化に関する法律「都市農地貸借法」が施行。生産緑地の指定を受けたまま、農業経営を行う企業や市民農園を開設する企業に農地を貸し出せることになりました。営農のハードルがかなり下がったのです。
こうした状況から、生産緑地を維持する地主が多くを占め、市場に供給される宅地は限定的に。地価に与える影響は大きくないと見られています。但し、都心への通勤などに便利なエリアでは売却を検討する地主もいると考えられ、一部地域においては地価高騰の可能性があると考えておいたほうがよいでしょう。
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2022年02月22日
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